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Date: Mon, 24 Aug 2009 14:51:06 +0900
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Subject: [JMM546Ex] K.I.T.虎ノ門大学院シンポジウム2009『第三の開国』前編
2009年8月24日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.546 Extra-Edition
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■ 2009年1月23日 K.I.T.虎ノ門大学院シンポジウム『第三の開国』
第一部基調講演(前編)
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■求められる人物像
三谷:今、どんな人がどれ位必要か、なぜ育たないのか、そのために根本的に必要な
事は何だろうということ、あるいは役割、つまり30代の役割、40代の役
割、もしくは教育の役割といったようなことについて、お話をさせていただけ
ればと思います。
村上:どういう人が必要かという時によく思い出すのは、僕が高校の頃、石油ショッ
クがあったんです。その時に、例えば東京外大のアラビア語科の競争率が、そ
れまで2倍ちょっとだったのが、一挙に20倍位になったんです。世界的に石
油が不足したり値上がりしたりするので、アラビア語をやっておけば有利なん
じゃないかということで増えたわけですが、その後、結局、石油はまだ充分に
あって、アラビア語をやったからといって別に有利でもなんでもないというこ
とになった。
ITとかインターネットとかが出てきた時のことも思い出していただきたいの
ですが、あの頃、ホームページを作れる人がすごく重宝されて、素晴らしいス
キルとしてもてはやされたわけです。例えば『アラビアのロレンス』を観てア
ラブに興味を持って、もうアラブが好きで好きでしょうがないからアラビア語
を勉強したという人は、石油ショックが終わってアラビア語が関係なくなって
も、非常に充実した人生を送れると思うんですよ。
「これがあると有利ではないか」というようなことで、自分のスキルや将来を
選んでしまうと、時代が変わったり、ある技術とか知識が陳腐化したりする
と、結局は役に立たない。だから僕はちょっと前に、自分が非常に興味のある
こと、もう2日ぐらい徹夜しても飽きないことに出会うことが一番大事じゃな
いかと思って、子供のための職業を紹介する本を作ったんです。
基本的に、人間が何かを学んだり、トレーニング受けたりする時のベースとな
る力というのは、ガッツじゃなくて好奇心だと思うんです。我慢して何かを学
ぶよりも本当は、なんてこの学問は面白いんだろう、なんてこの知識や技術は
わくわくするんだろう、というようなことと出会うのが一番いいんです。
■社会人教育というシステム
村上:ただ最近、僕の周りの若い人でも、1回社会に出てから、もっと勉強しとけば
よかったなとか、もっとこのトレーニングをしとけばよかったな、この資格が
あればよかったな、という人がすごく多いんです。社会に出て何年かした後
に、専門学校に行ったり、大学院に行ったりする人が、ものすごく多いらしい
ですね。
特に今は生きにくい時代になったというか、大企業に入って正社員になって
も、サービス残業があってこき使われたりするし、非正規社員の人たちの境遇
は、最近いつもニュースに出ているような状態です。そういった時に、強い資
格を取りたいという人が多いのは当然なんです。
学生について言うと、今の日本の大学のシステムには、勉強すればするほど有
利になるというインセンティブが無いんですよ。いつも思うのですが、「俺は
4年間、大学では麻雀しかしなかった!」と、自慢する人がいるんですよね。
「いやー、テストの前も麻雀してさあ」とか言って。僕は麻雀しないからわか
らないのですが、それを外国人に言ったらみんなビックリしますよ。学生時代
に勉強しなかったことを、なぜあんな自慢そうに言うんだ、と言うんですよ。
あれは恥ずかしいことだから、普通は言えない、と。
そういう中で卒業して社会に出て初めて、働く時に何が必要かということがわ
かるんじゃないかと思うんですよ。わかった時には、もう社会に出てるから働
かなければいけない。ただ、どうしてもこれだけはもう1回、あと2年か3年
は勉強したい、あるいはこの語学だけは身につけたい、この資格だけは取りた
いという人が多いと思うんです。僕はそれを、国として、あるいは社会として
サポートするシステムがあればすごくいいなと思います。
求められる人、ということに関して思うのは、好奇心が摩滅しないことと出会
った人が有利だということと、それに社会人になって気付く場合が多いので、
サポートするシステムがあればいいなという2点です。
■好奇心を持ち続ける
三谷:『好奇心』のいい対象に出会う仕組みは、なかなか見つけられない。
村上:好奇心は、余計なお世話さえしなければ、みんなずっと持ってるんですよ。た
だ子供の頃から、寄ってたかって好奇心という大事なものをむしり取ろうとす
る。普通に生きていれば、20歳になろうが30歳を過ぎようが、還暦を迎え
ようが、好奇心は絶対あるはずなんですよ。
もう産業構造も価値観も変わっているのに、いまだにいい大学とか、いい会社
に入れと、まあ他になかなか選択肢がないのでしょうがないのかもしれません
けど、大人の社会がプレッシャーかけますよね。その中で好奇心がどんどん失
われていくんじゃないかなと思います。
好奇心というのは、こう、ポコッとあるもんじゃなくて、人間の中にあるもの
なので。ただ何を学ぶにしろ、どんなトレーニングを受けるにしろ、興味が無
いことをやるのはすごく大変なんですよ。好奇心というものが自分の後ろ盾に
なってくれれば、何を学ぶにしても、どういうトレーニングを受けるにして
も、すごく有利だと思うんです。
三谷:そうですよね。
村上:お相撲の舞の海と対談した時に、講演会とかで若い人から「やりたいことが無
いんですけど、何をすればいいでしょうか」と聞かれるという話になりまし
た。そういう人、多いんですよ。で、「どう答えればいいですかね」と聞かれ
たので、「答えちゃダメだ」と言ったんです。
「自分はやりたいことが無いけど、何をすればいいでしょう」という質問が出
ない社会にしなきゃいけないんです。それは、やるべきことがある人は圧倒的
に有利だというコンセンサスがあれば、出ない質問なんです。「どうすれば好
奇心を持てるか」とか、「好奇心を育てる」とか言うから、無くなるんです。
お節介すると無くなっちゃうんですよね。
ここにいらっしゃるような皆さん達には、放っておくことの大事さを、ぜひ、
知っていただきたいなと思います。放っておくというのは、信頼感が無いとで
きないですよね。信頼してないから放っておかないんです。で、甘え合ってい
るから、「放っておかれた」といじけたりする。放っておくというのは、炎天
下の車の中に幼児を置いてパチンコに行くという意味じゃないですよ(笑)。
■社会人教育が必要な理由
三谷:社会に出てから、改めて学びたいという意欲が出てきた時に、それがちゃんと
学べるかどうかというお話がありました。一般的には、「じゃあ本でも読んで
頑張って勉強すればいいじゃないか」とも言えると思うのですが、それでは足
りないと思いますか?
村上:社会に出てから学びたいという人は、多分いっぱいいると思うんです。大きな
会社の正規社員の人からフリーターまで、いま話題になっている日雇い派遣の
ような非常にアンフェアな働き方をしている人の中にも、『あの時にもっとこ
うしてればよかった』と思っている人がいっぱいいると思うんですよ。
それに対して、遅い社会ではダメだと思うんですね。その人が気付いたら、道
筋が付けられるような社会でないといけない。僕はそれが今の日本に一番、欠
けていることだと思います。
今の日本は、非常にゆっくりと衰退に向かっていると思っていて、まあそれを
止めなくてもいいのかもしれませんが、衰退を遅らせるには今のタイミングし
かない。そのためには、失業保険や生活保護という最低限の、サーカスでいう
と空中ブランコが落ちた時に一番下に張ってあるようなセーフティネットでは
なくて、トランポリン型と言われているのですが、びょんびょん跳ねていける
ようなセーフティネットが必要だと思います。主に職業訓練や再教育のことで
す。
三谷先生は『意欲』と言ったけど、社会人になってから何か学びたいと思う人
のそれは、意欲どころじゃないと思うんです。飢えみたいなものだと思いま
す。勉強でもしてみようかなというようなのは、僕はダメだと思うんですよ。
でも、自分がこれから生きていく時に、これが無いとダメだというくらいの、
一種の飢えに近いモチベーションを持った人が、僕はかなりいると思うんです
よ。
社会はその人達がもう1回学校に行ったり、トレーニングを受けるところに行
くことをできるようにする、しかもお金がない人にはその分を負担するような
形をとる、そういうことを今すぐ始めないといけない。
(後編に続く)
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